ぼくたちはそうして、村上春樹が好きではない女のコを口説く方法を考えはじめた。カンチャンチャラとアブサンを呑みほして、
「キューバに行こう。キューバなら誰も村上春樹なんか読んじゃいない」
「待て待て、かわりにバルガス=ジョサとかマルケスとか読んでるんじゃないか?」
「そこらへんはきみの守備範囲じゃないか。ぼくはダンスを担当する」
「ううむ。しかし、コロニアリストのきみとちがって、ぼくは女を口説けるほど英語が得意じゃない」
「大丈夫、公用語はスペイン語だ。それに、キューバにはおさななじみがいるぞ。なにしろ共産主義国だからな」
「な、なんだって!」