彼は待っていた。
空きっ腹にアルコールが流れこむと、目眩が脳天を直撃した。夕飯より早く、彼は杯をあおらなければならなかった。理由のちょうど半分は、冬の厳寒にあった。残りの半分は、パンツのポケットでバイブレーションモードになっていた。
彼は待っていた。
文庫本を取り出し、適当なページを開いた。ジョニーのケツの穴に詰めこむらしい。別の穴かもしれない。それよりなにより、何を詰めこむのか判らなかった。バロウズを読むには酒場は暗すぎた。ジョニー、そう、ジョニーだ。彼は二杯めを頼んだ。
彼は待っていた。
キューバラムとコカコーラの混ぜものが彼の前に滑りこんだ。あの日、彼は待っていた。ジョニーは来なかった。そのジョニーではない。このジョニーでもない。あのジョニーだ。
彼は待っていた。
携帯電話が震えた。携帯電話が囁いた。「今から出る」酒杯を干し、彼は酒場を後にした。
ジョニーは、まだ来ない。