まさしく階差《DIFF/ERRENCE》と名づけられた妖怪《SPECTRE》が、いまもって徘徊しつづけている。あなたがたがシステムと呼んだものについての、これはふたつのちいさな物語である。
階差は隠蔽されている(注一)。システムが、機械が、機関が、階差をこそ、その基礎としているにも関わらず。
階差は隠蔽されている(注二)。
あなたがたがマイクロソフトウィンドウズと呼ばれるオペレーションシステムのいくつものバージョンのどれか(注三)を使っているとしたら、階差妖怪《DIFF COMMAND》はあなたがたの眼に届くところにはない。 開発環境(注四)を導入してようやく、あなたがたはその権力を手にすることができる。
あなたがたがマックオーエステンと呼ばれるオペレーションシステムのいくつものバージョン(注五)のどれかを使っているとしたら、それはビーエスディーと呼ばれる隠語が指し示す階層《LAYER》に隠されている。ビーエスディーとは、ユニックスと呼ばれたなにかに似ているなにかであり、しばしば悪魔《DAEMON》 の名において語られるシステムである。人が神に似せて造られたように、しかしだから、マックオーエステンは本物のユニックスになった。
階差とは、情報の差異である。これとそれを差別し、こことそこを峻別し、システムを駆動するための権力である。その権力は、特殊な秘儀を知るものだけにのみ許されている。その秘儀を魔術師たちはエスシーエム(注六)と呼ぶ。